チラリズムの効用

松永です、


チラリズムという言葉
知っていますか?


襟足や胸元からチラチラ見える
ところに色香を感じることです。


女優の浅香光代さんが
生みの親らしいです。


性的なイメージの言葉ですが
絵の世界でもこのやり方で注意を
向けさせることがあります。


具体的には主題にかさねて
視線をさえぎる物をおきます。


そのため鑑賞者は瞳をこらして
見なければいけなくなります。


そのことによって主題がより
魅力的に見えてきます。


この使い方がうまいのは北斎です。


富嶽三十六景の中に何枚もあります。


『駿州江尻』 

富嶽三十六景_武州千住
『武州千住』


『遠江山中』


『甲州三嶌越』


『本所立川』


『保土ヶ谷』


その他の絵でも富士山を
見えづらくする工夫がいくつも
あります。


そうすることで富士山の魅力を
引きたたせたわけです。


西洋絵画にもそういう例があります


とくに近代絵画にはよく見られます。


おそらく浮世絵の影響でしょう。


いい例はピサロの「赤い屋根」です。



手前の果樹園の木々が視界を
さえぎるように描かれています。


奥に見えている家々が
見えそうで見えないので
とても気になります。


鑑賞者はそこによさを感じるのです。


「エルミタージュのコート・デ・パブ」
になると観る者の視線を拒絶する
かのように木々が立ちはだかります。


ピサロに影響を受けたセザンヌの絵
でもよく見ることができます。

とくに「メダンの館」がそうです。




話は変わりますが大ヒットした
絵本「ウォーリーを探せ」を
知っていますか?




たくさんの人物の中から
ウォーリーを見つけるという
ただそれだけの本です。


それが爆発的に売れました。


あれは主人公のウォーリーが
どこにいるかわからないところが
よかったのです。


すぐ分かったら面白くない。


でも見つけられないのはイヤ。


そのギリギリのラインを
作ったのですね。


このように見えそうで見えない
ところにグッとくる感覚は
どこからくるのでしょうか。


それは人間に備わった想像する
能力からもたらされます。


原始時代には草木の茂みのなか
獲物を見つけ矢を射たりしていました。




自分の身も隠せるので成功率が
高いのです。


広々とした見わたしがいい所
での狩りは成功しにくいです。


見えにくい方が獲物をしとめやすい。


そちらのほうがオイシイのだ
という感覚がそなわりました。


ここらへんにいるかな?


あれはシカではないか?


視力と想像力をフル活用して
狩りをしていました。


こうして見えそうで見えないことに
興奮する感覚がつくられたのです。


これは狩りを担当した男性に
とくに強くあらわれます。


人間はやがて衣服を着る
ようになります。


そうすると見えなくなった部分を
想像しドキドキするようになります。


へんな話になりましたね。


あくまで私の仮説ですので
話はんぶんにお聞きください。


視界をさえぎるものを
テーマに重ねて配置することで
絵をよくする構成について
お話ししました。


そのような浮世絵の奇抜な構成が
西洋絵画に影響をあたえたことは
たしかでしょう。

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