7つのおつまみ

松永です。


晩酌のお供に「富嶽百景」を
めくっています。


富嶽百景『七橋一覧の不二』



大きな反り橋が画面を横切り
左右にはみ出る奇抜な構図です。


その下には小さく富士が鎮座する。


この図の元になっていると思われるのは次の2つです。



1806年 『たかはしのふじ』




1831-34年 『深川万年橋下(ふかがわまんねんばしした)』


2図を知っていた私は
わかった気になってしっかり
とは見ていませんでした。


今夜も何げなく眺めていました。


すると画面中央下に小さな反り橋
を見つけました。


「上とくらべたらかなり小さい橋だな…」


と、題名を見ると「七橋一覧」の
文字があります。


「7つの橋、そんなにあったか?」


前のめりで絵を見なおします。


すると右奥にも反り橋がありました。



あった!これで3つ。


「7つなんだよね。でも他にある?」


・・・・( 探索中 )・・・・


ありました、ありました。


中央の奥、富士の左右に
小さい反り橋が2です。



これで6つです。


あと1つはどこでしょう。


左中央に線の束がありますが
たぶんこれでしょう。



なんとか7つ見つけました。


題名を見なかったら、すべての橋に
気づくことはできなかったでしょう。


ところで北斎はなぜ7の数字を
選んだのでしょうか。


6つでも8つでもよかった
のではないでしょうか。


じつは「七橋一覧の不二」の
7つの橋は北斗七星を意味します。



どういうことでしょうか?


北斎は北斗七星を信仰の対象とする
妙見信仰の熱心な信者でした。


生活が苦しくなっていたときに
妙見さまに21日間おまいりを
したそうです。


するとどうでしょう。


みるみる絵が売れるようになり
一躍有名になりました。


「これも妙見さまのご加護あってのこと。ありがたや!」


とうぜんこうなりますよね。


そんなわけで北斗七星の7が
モチーフの数として多くつかわれる
ようになりました。


ちなみに「北斎」の雅号は
「北斎辰政(ときまさ)」を
短くしたものです。


妙見さまは「北辰菩薩(ほくしんぼさつ)」とも呼ばれます。


「北斎辰政」の1、3文字目を
合わせたら「北辰」ですよね。


つまり「北斎」の名には妙見さま
と北斗七星が含まれているのです。


北斗七星は近くの北極星を中心に
回転するので、図の中では富士山を
北極星とみなすことができます。


富士山を中心に回る7つの橋は
北斎の世界観と重なっている
といっていいでしょう。


いやいや奥が深いです。


「わかったかい。見ていると見えているって〜のは違うんだぜ」


北斎の声が北の空から聞こえてきた
ような気がしました。


「してやられたな」


もう一度絵を見なおすとするか。


すると…


近景で丸い笠をもっている人物が
7人いるではありませんか。


さてさて、ぐうぜんの一致かどうか
知るは北斎ただひとりです。


では、


秋の夜長は絵をたしなみつつ
また一献。

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