【赤富士の4と7】

松永です。


浮世絵をリリースする業務の
スリム化についてお話します。


浮世絵は現代の出版社にあたる
「版元」が作らせて売りました。

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絵師にとって版元はプロデューサー
になります。

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芸能人はプロデューサーの力で
売れたり売れなかったりします。


浮世絵プロデュースでも
おなじだったようです。


おおきく儲けるためには
たくさん売れる絵でなければ
いけません。


絵師には役者や名所、観光地など
当時の江戸っ子がよろこぶ
テーマで描かせました。


また経費を削減する工夫も
惜しみませんでした。


どのようにしてコストを下げた
のでしょう。


材料の節約としては版木の枚数や
絵の具の種類を少なくしました。


高価な絵の具は少しだけにする
などの条件もあったようです。


さらに色数を制限し
版の数を減らしました。


彫りの手間と摺りの回数
を少なくするためです。

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このようにして1枚あたりの
材料費と人件費を最小化しました。

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職人たちは知恵をしぼって
版元が決めたルールにしたがって
浮世絵をつくっていたのです。


コストをマックスで削減した代表格は
北斎の『凱風快晴』です。



一般的な版木の枚数は5枚
色摺りは10〜20回でした。

それにくらべて

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『凱風快晴』は版木が2枚、
摺りは7回とかなり少なめです。

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節約のため版木は両面使うので
2枚の板でも、じっさいの版は
4枚となります。

ちょっとまってください?


版が4枚だから4回摺りのはず
ですからが摺りは7回です。


ヘンですよね。


じつは1枚の版を複数回
使っているのです。


では7回の摺りをごらんください。


たしかに7回で完成しています。


色は青、緑、朱の3色のみ。


どの版で何回摺っているか
おわかりでしょうか?


答え合わせをしましょう。


・右上の版:山肌の黒、赤、緑(3回)
・右下の版:空のぼかし、濃・淡(2回)


とにかく平均以下の材料と工程で
このベストセラーを作ったのですから
おどろきです。


このように浮世絵は徹底的に
ムダを省いた省略美が特徴です。


これが世界中で高い評価をうける
理由のひとつなのでしょう。

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