夕立にあわてふためく

松永です。


なんでいつも勝てないんだ!
チクショウ!


こんな気持にさせる
ライバルはいますか?


私にはいつもいました。


最初のライバルは
小学生のころの友人です。


彼はいつも成績トップで
私はよくて3位どまりでした。


どうしても勝てませんでした。
勝てないと思い込んでいました。


転機が訪れたのは中学校での
最初のテストでした。


トップとの差が合計得点で
わずか6点だったのです。


あいつに勝てる!


そう確信した私は気合を入れて
勉強をしたのですが、次のテストでは
初めてトップになりました。


やればできることがわかり
不思議な気持ちになりました。


努力によって力関係が
変わってしまうことを体感した
瞬間でした。


ライバルはありがたい存在です。


彼のおかげで学力を高める
ことができました。


北斎と広重もライバルでした。
(レベルが違いすぎてゴメンナサイ)


2人の違いは一言でいうと
技の北斎、情緒の広重となります。


力でグイグイ押しまくる北斎は
刺激的でカッコいいのですが江戸っ子に
より響いたのは広重だったようです。


『東海道五十三次 庄野 白雨』



安藤広重による東海道五十三次の
傑作として知られています。


「白雨」とは、白日(昼間)の
はげしい夕立のことです。


北斎にも「山下白雨」がありますね。



庄野は45番目の宿場で現在の
三重県鈴鹿市にありました。


絵を見ましょう。


宿場をでたところでにわかに
黒雲がたちこめ夕立がつよく
ふりはじめた場面です。


行き来する人たちがあわてて
走りだすようすがイキイキと
描かれています。


角度を変えたまっすぐな雨と
画面上端、黒の一文字ぼかしから
叩きつける強い雨が表現されています。
 


風の強さで竹やぶや草は左に
大きく傾いていますね。


竹やぶは輪郭線のない二重の
シルエットを重ねて奥行きと夕立に
けむるようすがよくわかります。


また降る雨の角度を変えるなど
技法的にも新たな試みもしています。



とても効果的です。


右下、青脚絆(きゃはん)の旅人は
番傘を半びらきにし飛ばされまいと
ふんばっています。



ミノをまとい鍬をかついだ農夫は
笠を前に傾け突風にさからって坂を
かけおりていきます。


のぼりの駕籠(かご)かきは籠に
カッパをかけていますが突風で
めくれています。



農夫はムシロを背にのせ風に
あと押しおしされるかっこうで
坂をかけのぼっています。


全体に暗い色調に明るい色で描かれた
人々の動きが画面を緊張させています。


半びらきの番傘にある「竹のうち」
「五十三次」の文字がみえますか?



「竹のうち」は版元である保永堂
竹内眉山(たけのうちびざん)のことです。


版元にとってはここが宣伝の場
でもあったようですね。


保永堂は小さな版元でしたが広重の
「東海道五十三次」を版行したことで
一役トップ版元になりました。


トップランナーになった広重も同じで
北斎を上回る人気絵師になりました。


広重は日本の風土をいろどる
気象現象を巧みにとりいれています。


みる人にしみじみとした共感や
愛着をおぼえる親しみぶかさが
こめられているのです。

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