松永です、
72歳で名作『神奈川沖浪裏』を描いた北斎。
1999年、米ライフ誌の
「この1000年で最も重要な功績
を残した世界の人物100人」
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日本人で選ばれたのは北斎
ただ1人です。
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画家では、レオネルド、
ミケランジェロ、ラファエロ、
ピカソ、北斎、この4人だけ。
北斎の世界に与えた影響力が
いかに大きかったかわかります。
でも北斎は最初から「北斎」
だったのではありません。
33歳のときに描いた『江ノ島春望』
うまいには違いないのですが
北斎はまだ、ごくふつうの絵師でした。
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世界の巨匠クラスは20代で
美術史にのこる名画を描いています。
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北斎のほかの3人の手による
20代の作品はこのとおりです。
レオナルド:『受胎告知』
ミケランジェロ:『ダヴィデ像』
ラファエロ:『ヒワの聖母』
ピカソ:『アヴィニョンの娘たち』
ごらんのとおり20代にして
りっぱな世界の巨匠です。
北斎はどうでしょうか。
「北斎といえばこの作品だよね」
といわれるものは
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すべて50歳をすぎてからのものです。
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まず北斎が44歳で描いた波を見てみましょう。
『賀奈川沖本杢之図』
(かながわおきほんのくのず)
せりあがった大きな波そして
押送舟(おしおくりぶね)
が2つ見えます。
※押送舟:小型の高速船で鮮魚類を
江戸へはこぶために使用された。
ザブ〜ンと音がきこえるような
波ではないですよね。
止まって見えますし。
さらに2年後、46歳の波です。
『おしおくりはとうつうせんのづ』
かなり迫力がでてきました。
前作の『賀奈川沖本杢之図』を
改良したようです。
絵の構図が左右反転しており
押送舟は3つに増えています。
でもまだ波がモッサリしています。
『神奈川沖浪裏』と同じ構成です。
同じ配置で表現を洗練させていき
その結果『神奈川沖浪裏』に
行きついたようです。
波に陰影がほどこされて
いますね。
それに題名が横がきで
英語の筆記体にみえます。
西洋絵画の研究をしていた
影響でしょう。
さらに12年後はどうなって
いるでしょうか。
『北斎漫画 8編』から〈阿波の鳴門〉
鳴門のうずまきを描いた図です。
波の流動感と岩にくだけちる
カギ爪が現れました。
ゴーッという音が
聞こえてくるようですね。
60歳前の作品です。
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斎漫画は1814年初版で
北斎54歳のときです。
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大ヒット作になり北斎は
いちやくトップ絵師になります。
50歳が寿命といわれていた
時代だったのに、ここからが
本番だったわけです。
現代でも、そう若くはない
年齢だとおもいます。
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「富嶽三十六景」によって風景画
という新ジャンルをうちたてるまで
40年かかりました。
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88歳で亡くなるまで
絵筆を離さなかった画狂老人。
絵だけではなく人としての生き方
はいかにあるべきかの教訓も
残してくれたのでした。
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