松永です。
絵を見ていると
「なんだろう?これ」
と思うことがあります。
例えば浮世絵に描かれた馬が
履いているワラジです。
馬がワラジを履くなんて聞いたこと
がありません。
じつはこれ「馬沓(うまぐつ)」という
蹄を守っていた履物です。
このように、常識だったことでも
今は誰も知らないというものが
あります。
今回は広重の絵に「何これ?」
を見つけてみましょう。
東海道五十三次の『日本橋』です。
朝焼けの空の下、橋向こうの魚河岸
で仕入れをすませた人たちが魚売り
に向かっています。
橋の上には早朝に出立する参勤交代
の行列が見えます。
この絵を見て
「何これ?」
と思うものはないでしょうか。
先頭2列目にいる人が持っている
フサフサがついた長い棒ですか?
これは「毛槍(けやり)」というもので
先端を鳥の羽毛でかざったものです。
大名ごとに違ったかざりをつけるので
遠目にみてもどの大名家か見分けが
ついたのだそうです。
これは時代劇でよく見ていたので
わたしはスルーしていました。
私が気になったのは画面の
一番手前にある左右の柵です。
よく見ると蝶番(ちょうつがい)
が見えるので門のようです。
なぜ、ここにあるのでしょう。
日本橋を渡ったら直線方向に道が
続いているはずですよね。
そこに門があるのはナゼ?
じつは、これ、「木戸(きど)」
とよばれる保安用の門です。
木戸は2町の境、武家町と町人町
との境に置かれました。
昼間は往来ができましたが
午後10時には門を閉めました。
木戸には「木戸番」という見張りが
2人いて、用事のある者は木戸番
が改めました。
そして木戸の左右にある小さな戸
から出入りをしました。
木戸番は通った人数だけ拍子木を
打ち、次の木戸番に知らせました。
拍子木が鳴って誰も来ないときは
人を出して町内を捜索するという
徹底ぶりだったといいます。
医師、産婆など人の命にかかわる
仕事の人はそのまま通しました。
盗賊が医者のふりをして逃げのびる
など時代劇のようなことがあった
かもしれません。
このようにして不審者の通行や
盗賊の逃走を防いだわけです。
木戸番は独身で番小屋に
住むことになっていました。
このようにして江戸の平安は
保たれていたのです。
今では交番がこの役目をして
いるのでしょう。
コメント