松永です。
摺師(すりし)は高度な技で
腕をきそいあいました。
今回とりあげるのは、
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「地潰し(じつぶし)」
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余白部分を単色でぬりつぶす
技法です。『
『當時全盛美人揃・兵庫屋内花妻』
(とうじぜんせいびじんぞろい ひょうごやうちはなつま)
「當時全盛美人揃」は美人で評判の
女郎、芸姑、茶屋の娘などを描いた
大首絵のシリーズです。
背景は黄色ですね。
かんたんな摺りに見える
かもしれません。
現代の印刷物を見なれているから
そう思うのでしょう。
でも木版画でムラなく摺るには
熟練の技がひつようです。
この絵は黄色の背景なので
「黄潰し」と呼ばれます。
手順は3ステップです。
ステップ1:絵の具を絵皿に溶く
顔料に合わせた水加減にする
ステップ2:版木にハケで塗る
絵の具の厚みを均一にする
ステップ3:バレンで摺る
圧力を一定にして紙に定着させる
このようにして色紙を貼った
かのような黄色の色面が
ビタッとできます。
気にもとめなかった余白が
手のこんだ技術によって
つくられていてのですね。
パステルカラーの黄潰しは女性の
白い肌をきわだたせ明るく上品な
印象を与えます。
歌麿、写楽の大首絵(おおくびえ)
では「地潰し」をよく見かけます。
大首絵とは、上半身像や胸像を画面に
入れた絵のことです。
顔の表情や仕草がよく見える
ようにと考案されました。
つぎに写楽の地潰しを
見てみましょう。
『三世坂田半五郎の藤川水右衛門』
は「鼠潰し(ねずみつぶし)」です。
藤川水右衛門は歌舞伎にでてくる
大悪人です。
三世坂田半五郎はそれを演じた
役者で悪役専門でした。
全体的にグレー調で、いかにも悪人
という地味な色あいですね。
「鼠潰し」が効果的です。
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このように背景の色は全体のイメージに
おおきく影響をあたえます。
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鈴木春信の『夜の梅』には
「黒潰し」が使われています。
さしむける灯りに、白梅と美人の姿
がうかびあがり幻想的なイメージ
を感じさせます。
とても美しい黒色です。
浮世絵では、まっ黒の色面が
たくさんつかわれました。
西欧の画家はこのように黒を
使わなかったのでとても
おどろいたそうです。
浮世絵の影響をうけたマネは画面を
明るくするため黒色の色面を使う
ようになります。
『すみれの花束をつけたベルト・モリゾ』
エドゥアール・マネ 作
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