癒やしのザリガニ

絵画の働きの1つに「癒やし」があります。そんな絵を見せてくれるのがスウェーデンの国民画家カール・ラーションです。


この絵は家族でザリガニ獲りを楽しんでいる場面を描いています。豊かな自然を舞台に愛する妻カーリンと6人の子どもたちが登場人物です。


左下の女の子がいたずらっぽい目つきでこちらを見ています。視線の先には父親であるカール・ラーションがいるのでしょう。女の子の視線によって絵を観ている人は同じ場にいるような臨場感を覚えます。



スウェーデンでは8月15日のザリガニ解禁日にザリガニを捕りパーティーを行う風習があります。


画面下中央にはテーブルの上に茹でたザリガニが積まれており、食器やグラス、パンが用意されていて今まさにザリガニパーティーが始まろうとしているみたいです。



少しはなれたところでお母さんがポットにお湯を沸かしていますね。その近くに赤ちゃんが座っていて、ザリガニに手を伸ばしています。ちょっと心配です。



さて、パーティーの準備はできているのに子どもたちはザリガニ捕りに夢中です。この後お母さんが「さあ、パーティーよ!」と声をかけたらワーッと集まってくることでしょう。



ここにいる人々は「わたし幸せです!」という表情も動作もしていません。自分の「仕事」に集中しています。それらは、ザリガニパーティーに向けてやっていることです。


1人だけやることがなくなってイスに座って始まるのを待っています。「パパ、まだ始めないの?」とでも言いたげです。


登場人物は全員が喜びの頂点に向けた準備をしているのです。


私たちは、その場面を見ることはできません。だからこそ、よりいっそう喜びの感情を受け取ることができるのです。

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