日本全国をかけめぐった絵師

松永です。


あなたがお住まいの地域では
いくつかの名所があると思います。


『六十余州名所図会』
(ろくじゅうよしゅうめいしょずえ)


歌川広重 による名所を描いた
浮世絵版画の連作です。


五畿七道(ごきしちどう)の
68か国に江戸をくわえ
各地1枚ずつの69作、


それに目録1枚を加えた全70枚
からなります。


目録には土地名と名勝地が
1セットずつ書かれています。


お住まいの地域では、どこが
名所になっていますかか?


現代の感覚とはちがって
いるでしょうから、


「え〜、なんでそこなの?広重さん」


と言いたくなるかも
しれませんね。


ところで全国各地の名所なので
足をはこぶのはムリだと思う
ところばかりです。


いろんな資料をもとに
想像力をはたらかせて描いた
と考えていいでしょう。


広重の傑作「東海道五十三次」は
京都まで旅をしたときの見聞が
もとになっているそうです。


江戸から京都までは何とか
カバーできたかもしれませんね。


東海道の中に富士山があるはず
と思いましたがありませんでした。


絵の中に描かれているのかもしれません。


3つありました!


《 駿河 三保のまつ原 》
[ 静岡県藤沢市江の島 ]


駿河湾をはさんで富士山が美しく
見え人々に愛されて来た名勝です。


富士山の世界文化遺産の一部
として登録されてもいます。


《 相模さがみ 江之島えのしま 岩屋ノ口 》
 静岡県藤沢市江の島 

富士山がまん中で切れた
おもしろい構成です。


江ノ島のウラにある、岩屋
まな板岩などが見えます。


右がわには参道が、周辺には参詣の
人々が小さく描かれています。


《 下総 銚子の浜外浦 》
[ 静岡県静岡市 ]


下総は千葉県と茨城県をまたぐ
地域の旧国名です。


江戸時代、銚子は景勝地として
人気がありました。


左側に見えるのは千騎ヶ岩

(せんがいわ)です。


源義経が千騎の兵を隠したという
伝説からこの名がつきました。


とおくに富士山が見えています。


3図とも画面は縦長で
前景を大きく描き遠近を強調し
大胆にトリミングをするすなど
おもしろい構成です。


さて、もういちど広重の目録に
もどりましょう。


あなたのお住まい近くでは
どこが名所になっていますか?


旧字体なので読めない
かもしれませんね。


調べて解読するのも
またたのしいでしょう。


残念なことに、この中に
入っていない地域もあります。


「江戸時代のものなので
 あしからずご了承ください」


広重さんからの
ことづけです。

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